CO2排出量の削減
CO2分離・回収や生産性向上で、製造や発電でのCO2排出量を削減
HORIBAは、カーボンリサイクルにおけるさまざまなプロセス中のガス監視、燃料・素材などリサイクル製品の分析や品質管理、さらに反応プロセスに必要な触媒材料の分析・評価など、プロセスから材料まで「はかる」技術を通じて、カーボンリサイクル技術の向上・普及に貢献します。
カーボンリサイクルは、 CO2やバイオマス・廃プラスチック等をカーボン資源ととらえ、合成燃料・化学品・各種素材またはエネルギーとして有効利用し、資源循環させることです。(図1:カーボン資源の循環と利活用)
CO2のリサイクルには、合成燃料製造、メタネーションによるメタン(CH4)製造、人工光合成による水素や化学品製造があります。再生可能エネルギーから製造された水素と回収されたCO2により製造される合成燃料や合成メタンの研究開発や実証も進んでいます。
バイオマスのリサイクルは、飼料や堆肥を原料とする従来の活用方法以外に、発電やモビリティ向けの燃料にも活用されます。特にカーボンリサイクルで作られる燃料は、内燃機関の変更や改造を必要とせず従来の燃料にそのまま混合できる「ドロップイン燃料」として使用できる利点があります。
廃プラスチックのリサイクルには、プラスチック原料として再製品化するマテリアルリサイクル、化学品・製鉄の原料をガス化して水素や合成ガスを製造するケミカルリサイクル、いろいろな発電の燃料として活用されエネルギーとして回収されるサーマルリカバリーがあります。
HORIBAは、カーボンリサイクルにおけるさまざまなプロセス中のガス監視、燃料・素材などリサイクル製品の分析や品質管理、さらに反応プロセスに必要な触媒材料の分析・評価など、プロセスから材料まで「はかる」技術を通じて、カーボンリサイクル技術の向上・普及に貢献します。
代表的なCO2リサイクルには、再生可能エネルギーを用いて水を電気分解して作られた水素と回収されたCO2 と反応させて製造する「合成燃料」や、「メタネーション」と呼ばれるメタン(CH4)製造、CO2を原材料とした化学品の製造、太陽光と水とCO2を組み合わせた「人工光合成」による水素や有機化合物製造があります。
CO2回収の技術に関しては、こちらをご覧ください。
合成燃料の製造は大きくは2つのプロセスで構築されています。一つは、CO2と水素または水より合成ガス(H2・CO)を製造するプロセス、もう一つは、製造された合成ガスより合成燃料製品を製造するプロセスです。
合成ガス(水素・CO)を製造する技術には、CO2をCOに転化する「逆シフト反応」、水を水素と酸素に電気の力で分解(電解)する「水電解」、そしてCO2と水を同時に電解する「共電解」などがあります。
これらの技術を実用化・最適化するために、 H2とCOの製造比率の最適化や製造エネルギー効率の向上、設備を含む製造コストの低下や耐久性の向上といったさまざまな研究開発が進んでいます。また水電解した水素とCO2を合成しメタンを製造する「メタネーション」では、サバティエ反応に比べ、廃熱での熱損失が少ない共電解を用いたメタネーションプロセスの実用化と最適化も進められています。
例えば、固体酸化物形電解セル(SOEC:Solid Oxide Electrolysis Cell)による共電解の研究開発では、効率的に水素とCOを生み出すために、SOECを実際にさまざまな環境や試験条件で動作させ評価することが重要です。また、メタネーションのサバティエ反応を最適化するには、合成メタンの収率や使用触媒の耐久性の向上が必須です。
HORIBAは、合成ガス(H2・CO)の製造やメタネーションの研究開発から実用化まで、さまざまな分析・計測・試験評価のソリューションでお客様の課題解決に貢献します。メタネーションは、原料となる高濃度の水素とCO2、および合成されたメタンガスの濃度計測・監視が必要です。水電解セル・スタック評価装置 Evaluator EC / ESは、さまざまなガスを流して、SOECの水素製造性能、耐久性の評価等を行います。
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研究開発用途
多成分ガスの高速同時計測に:FTIR法 排ガス測定装置 FTX-ONEシリーズ
発生する多種多様な微量ガス成分の計測に:マルチガス分析計 VA-5000シリーズ
製造用途
主要なガス成分の計測に:防爆形プロセス用ガス分析計 51シリーズ
合成ガスから液体合成燃料を製造するプロセスでは、FT(Fischer-Tropsch)合成により合成ガスから合成粗油を製造し、その合成粗油を従来の製油所(石油精製所)の製造技術や精製プロセス(アップグレーディング)を活用して、必要な種類の液体合成燃料(ドロップイン燃料)が製造されます。 HORIBAは米国で長年培った、石油精製における分析・計測技術のノウハウを活かした製品・エンジニアリング・サービスを提供し、液体合成燃料製造技術の向上に貢献しています。(下図:FT合成とアップグレーディング)
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人工光合成は、太陽光エネルギーを活用して水とCO2を原材料に水素やオレフィンなどの化学品を合成する技術です。植物が太陽光とCO2から光合成をおこなう仕組みに似ているため「人工光合成」と呼ばれます。脱炭素社会の実現をめざし、より高効率な光触媒の研究・開発が進められています。
太陽光は幅広い波長の光を含んでおり、エネルギーの強い短波長領域だけでなく、近赤外領域などの長波長領域まで活用することが大切です。
人工光合成用の光触媒として用いられる錯体触媒の性能を評価するには、その励起および蛍光発光特性を広い波長範囲で測定することが鍵となります。
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蛍光吸光分光装置 Duettaは、1,000nmを超えるような近赤外領域での発光特性を評価でき、触媒材料の反応効率向上に貢献します。
バイオマスは、化石燃料を除く生物体を由来とする有機性資源です。バイオマスのリサイクルでは、森林の間伐材や家畜の排せつ物、食品廃棄物などこれまで廃棄物であったバイオマスを資源としてさまざまな用途に有効活用することが可能です。(下表)
バイオマスは化石燃料と同様に燃焼させることができ、発電や熱供給に活用した場合でも、化石資源とは異なり大気中の二酸化炭素を増加させないカーボンニュートラルな資源として着目されています。
バイオマスのリサイクルから生まれる製品の中でも、バイオエタノール、バイオディーゼル、SAF(Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料))は、自動車や航空機等のモビリティ燃料として使用されています。またバイオマスから得られるバイオガス、熱分解ガス、廃棄物由来の固形燃料は、バイオマス発電における燃料として利用されています。
バイオマスから製造される燃料(バイオ燃料)には、自動車や発電機用の液体燃料として従来のディーゼルと混合して使用するバイオエタノール、バイオディーゼル(FAME: Fatty Acid Methyl Ester)、水素化植物油(HVO: Hydrotreated Vegetable Oil)があり、今後は従来燃料との混合率が向上していく方向です。また航空機燃料用バイオ燃料であるSAF(Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料))は、使用原料や製造プロセスによりATJ(Alcohol-to-Jet)、HEFA(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids)、FT(Fischer-Tropsch)等に分類され、従来燃料との混合率の上限が決められています。混合率の向上や代替を促進するには、バイオ燃料の製造コスト低減、熱量の向上、腐食性の低減等に加え、安定的な原料確保・供給のためのサプライチェーンの確立・改善も必要です。
バイオマスを用いた燃料製造プロセスにおいても、これまでの製油所(石油精製所)の製造ラインとプロセスが活用できます。 HORIBAは米国で長年培った、石油精製における分析・計測技術のノウハウを活かした製品・エンジニアリング・サービスを提供し、モビリティ向け液体燃料製造へも貢献しています。また、バイオ燃料をはじめとする新たな燃料を実際にモビリティへ使用する場合は、モビリティ自体の性能や耐久性などの総合評価が重要です。
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バイオマス発電・バイオガス発電に関するさらに詳しい計測ソリューション
廃棄物処理場やごみ焼却場で、リサイクルできないバイオマス原料を燃焼し熱としてエネルギー回収する場合、サーマルリカバリーで廃プラスチックを燃料に使用した発電と同様の課題が発生する場合もあります。詳しくはこちらをご覧ください:廃棄物発電における分析・計測ソリューション
木材・植物由来のバイオマスを原料とするセルロースナノファイバー(CNF:Cellulose Nano Fiber)は、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度等の特性を持つ新素材として、様々な基盤素材への活用が期待されています。CNFの品質管理やその活用では、繊維の大きさや液(ゲル)中の分散状態の高速・高分解能での把握が必要です。HORIBAは、こうしたナノレベルでの材料特性評価を実現する粒子評価装置を提案します。
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CNFの粒子径分布測定に:遠心式ナノ粒子解析装置 Partica CENTRIFUGE
CNFゲル材料の構造評価に:ナノ粒子解析装置 nanoPartica SZ-100V2
廃プラスチックを資源として積極的に再活用(リサイクル)することで、あらたな化石資源の使用・CO2の排出を削減し、 カーボン資源の循環への貢献が期待されています。
プラスチック製品の原料に再生するマテリアルリサイクル、化学品・製鉄用原料や水素・合成燃料を生み出すケミカルリサイクル、マテリアル/ケミカルサイクルに適さない廃プラスチックを燃焼しエネルギーとして回収するサーマルリカバリーによって有効活用が図られています。(下表)
マテリアルリサイクルは、廃プラスチックをプラスチックのままで原料にして新しい製品をつくります。廃プラスチック分別や再製品化する工程では原料となるプラスチックの種類の判定が重要です。HORIBAはプラスチックの種類判定に対し、新たな分析・測定手法によるソリューションを提供しています。
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プラスチックを非接触で自動判別:ハイパースペクトルカメラ用分光器
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HORIBAは、廃プラスチックのガス化の監視に欠かせない必要なガス分析計をお客様の製造設備や稼働環境に合わせて最適化し、提供いたします。
熱分解ガス中の各成分のガス濃度計測に:マルチガス分析計 VA-5000シリーズ、煙道排ガス分析装置 ENDA-5000V2
燃焼効率向上や不完全燃焼確認のためのO2濃度計測に:ジルコニア酸素計 NZ-3000
脱硝・脱硫監視や排ガス監視のためのガス濃度計測に:煙道排ガス分析装置 ENDA-5000V2
防爆エリアでの各種ガス濃度計測に:防爆形プロセス用ガス分析計 51シリーズ
廃プラスチックを高炉の還元剤やコークス炉の原料として使用することで、製鉄に必要な資源量を削減します。
高炉やコークス炉での発生ガスを連続ガス計測することで、廃プラスチック使用時の影響把握に役立ちます。
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鉄鋼産業に対するソリューションは、こちらに取りまとめています。ぜひご覧ください。
3つのリサイクルの中で現在一番活用されているのがサーマルリカバリーです。廃プラスチック・古紙を原料した固形燃料(RPF)や廃プラスチックは、ごみ焼却場や産廃処理工場等の発電用の燃料として使用することで、エネルギーとして回収できます。サーマルリカバリーによるエネルギー回収率を向上させるには、焼却設備、ガス化設備、発電設備といった各設備の稼働状態の最適化が必要です。この稼働の最適化にはガス・ダストの計測が活躍します。HORIBAは新たな測定手法や分析計によるサーマルリカバリー向けソリューションを今後も展開していきます。
RPF(Refuse paper and Plastic Fuel)は、古紙や廃プラスチックを主原料とする固形燃料で、発電用燃料や廃プラスチックのガス化燃料としても利用されています。
RPFに含まれる塩素含有量のスクリーニング分析
RPFには、焼却炉の劣化原因の1つである塩素(Cl)が含まれていることがあります。RPFを焼却炉用燃料として使用する前に、塩素の含有量を確認して除去することで、焼却炉の劣化の防止につながります。
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RPFに含まれる塩素含有量のスクリーニング分析に:卓上型蛍光X線分析装置 MESA-50
廃棄物発電やごみ焼却発電では、廃プラスチック燃焼で発生するさまざまな課題、例えば塩化水素(HCl)の処理など、一般的な火力発電とは違う処理プロセスが必要です。また、一般的な火力発電に比べ発電効率があまり高くないため、発電効率を向上させる廃棄物ガス化技術の導入も進んでいます。
HORIBAは、発電効率向上や排ガス処理装置の運用・管理に必要な連続ガス分析装置をはじめ、幅広いラインアップの分析装置を提供し、廃棄物発電の課題解決に貢献しています。
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廃棄物発電に対するソリューションは、こちらに取りまとめています。ぜひご覧ください。
セメント製造の焼成工程では、プレヒーター用の熱を生み出す仮燃焼炉の燃料やロータリーキルンの燃料として廃プラスチック・バイオマスが使用されます。また焼成工程で排出されるCO2を原料としたメタネーション設備を組み合わせている工場もあります。HORIBAは、生産性の向上や排ガス処理装置の運用・管理に必要な連続ガス分析装置をはじめ、幅広いラインアップの分析装置を提供し、セメント製造の課題解決に貢献しています。
カーボンを利活用したカーボン資源循環の確立には、CO2のリサイクル、バイオマスのリサイクル、廃プラスチックのリサイクルを加速し拡大していく必要があります。カーボン資源循環の共通課題として、製造コストの低減と最終製品の品質向上が挙げられます。特に、製造のさまざまなプロセスで使用される触媒の性能・コスト・耐久性の改善は、課題解決に直結します。このようにカーボン資源循環と触媒は密接に関係しており、触媒の研究開発、各プロセスの実証、社会実装、プラント等での製品製造の各フェーズで、触媒の評価と改良が行われます。具体的には、触媒の炭化や被毒等による性能低下や劣化の防止のために、カーボン資源の品質確保、プロセスの安定稼働、不純物の排除が重要になります。
HORIBAは、カーボンリサイクルに関する触媒の研究開発~触媒を使用したプロセスによる最終製品製造に関して、さまざまな分析・計測・試験評価のソリューションで支援します。
HORIBAグループで分析・サービス事業を担う株式会社堀場テクノサービスでは、分析を主要な業務とする「Analytical Solution Plaza」を設置しています。Analytical Solution Plazaでは分析機器選定のご相談のほか、分析装置メーカーならではのノウハウとスキルを活かし、受託分析などのサービスや、お客様やアカデミアとの共同研究等を通じて分析技術を提供しています。