カーボンリサイクル
化学品・燃料・各種素材または熱として、CO2や廃棄プラスチックを有効利用
さまざまな排出ガスからCO2を分離・回収し、そのCO2を貯留・固定化することで、大気中に放出されるCO2の排出量を大幅に削減できます。特に、製造や発電での燃焼プロセスにおいては、大きな効果が期待できます。また、大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)技術はネガティブエミッションを実現します。HORIBAは、これらの技術の研究開発から実用化まで、ガス・液体計測、材料分析・評価などの幅広い「はかる」技術で貢献します。
燃焼プロセスで発生する排ガスからCO2を分離・回収します。これはCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)のCC(Carbon dioxide Capture)の部分にあたります。コストや技術の面から、火力発電所では「化学吸収法」、化学プラントでは「物理吸着法」、セメント・鉄鋼プラントでは「膜分離法」が有利とされています。
分離・回収したCO2は、カーボンリサイクルにも利活用されます。カーボンリサイクルに関するソリューションはこちらをご覧ください。
高品質なCO2を生成するには、分離・回収・精製プロセスでのCO2や不純物ガスの計測・監視はもとより、前後処理での不純物ガスの計測・監視も重要です。
前処理: 排ガスに含まれる硫黄系ガスを脱硫処理で除去します。脱硫前後でのSO2、脱硫後のCO2の計測・監視が必要です。
分離・回収・精製: 分離・回収プロセスの最適化には、吸収塔でアミンによるCO2の回収率の管理が必要です。そのため、CO2のガス計測・監視が重要です。
後処理: 吸着後の溶液をTOC計で測定することで、CO2の吸着量を確認できます。また、溶液からのCO2分離プロセス後に、溶液自体を測定することでCO2の分離判定も可能です。さらに、CO2除去後の不要ガスを処理し、煙突から最終排出できるレベルに達したことを確認するための排ガス計測・監視が必要です。
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アミン法におけるさまざまな計測・監視
さまざまなガスの濃度監視に:マルチガス分析装置 VA-5000、煙道排ガス分析装置 ENDA-5000V2
アンモニア・アミンの濃度測定に:微量ガス分析計 APNA-370/CU-2
アミン溶液の簡易チェックに:pH・導電率:水質分析計 H-1シリーズ
アミン溶液の詳しい状態把握に:プロセスラマンシステム
アミン溶液のCO2分離・回収評価に:自動全有機体炭素(TOC)測定装置 T1シリーズ
物理吸着法は、吸着材(活性炭・ゼオライトなどの多孔質固体)にCO2を吸着させ、減圧または加熱によってCO2を脱離させる分離技術です。物質の結合状態を捉えるラマン顕微鏡を用い、ゼオライト表面で起こる吸着などの状態変化を観察することで、吸着剤の性能評価や劣化解析に役立ちます。
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吸着材の性能評価・劣化解析に:ラマン顕微鏡 XploRA PLUS
膜分離法は、CO2分離機能を持つ高分子膜などを用い、圧力差により選択的にCO2を分離する技術です。反応後の分離膜に付着した炭素量や触媒の硫黄量を測り、膜や触媒の劣化度を評価することで、膜の反応効率や交換周期の予測に役立ちます。
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膜の反応効率・交換時期の評価に:炭素・硫黄分析装置 EMIA-Step
また、HORIBAは、CO2だけを透過させるCO2透過膜の透過性能を評価する試験装置の製作が可能です。評価試験ではCO2以外の不純なガスが膜を透過していないか確認することが必要です。
試験装置では、膜の前後で圧力制御することで透過状況の変化を確認することができます。ガスには水分も含まれてる可能性があるので、気化器のシステムも合わせてご提案が可能です。
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CO2透過膜の性能試験に:CO2透過膜向け試験装置
CO2透過膜の透過性能とCO2以外の不純ガスが膜を透過していないかを評価するための試験装置。(図:CO2透過膜向け試験装置の構成と試験の概略フロー)
圧力変動吸収法(PSA法)
石炭・天然ガスをベースとした水素(グレー水素)製造工程で発生するCO2を、PSA法(Pressure Swing Adsorption)で分離・回収し、大気へCO2を排出しない水素(ブルー水素)が製造されます。HORIBAは、燃焼プロセスのCO2分離・回収で培ったソリューションでブルー水素製造にも貢献します。
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ネガティブエミッション※を実現する技術の1つとして、大気中の CO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)が注目を集めています。年間3万トン以上のCO2を回収する大型のDAC施設も稼働を開始しています。
※ネガティブエミッション:大気中のCO2を分離・回収し、貯留または固定化することで、大気中のCO2に対しマイナスの(ネガティブな)CO2排出量(エミッション)を達成する技術
通常のCO2の分離・回収(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)は、火力発電所や製鉄所などで排出される高濃度のCO2が対象ですが、DACは大気中の低濃度CO2(約400 ppm)を分離・回収します。対象となるCO2濃度は異なりますが、DACのCO2分離・回収技術自体は、通常のCO2の分離・回収で使用と同じ化学吸収法、物理吸着法、膜分離法等を応用しています。
DACで回収されたCO2をCCSと同様に貯留する技術は、DACCSと呼ばれます。
今後のDAC大型化には、より高性能な吸収液、吸着剤、分離膜が必要です。さらに大気回収装置用のエネルギーも含め、設備全体のエネルギーとその効率化も大きな課題です。
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大気モニタリングシステム「AQMS」で大気中のガス濃度を連続計測することで、DACの研究開発や最適化に貢献できます。
さらにデータ収集・管理・可視化・帳票化をサーバーで一元管理するデータマネジメントソフトウェア「Eco-WEB」(英語サイト)と組み合わせることで、多様なデータ解析も可能です。
HORIBAは、さまざまなプロセスにおけるCO2分離・回収で培ったソリューションや触媒の研究開発・品質管理のソリューションをベースに、大気モニタリング、ガス計測のエンジニアリングを組み合わせて、DACによるCO2の直接回収に貢献します。
触媒や吸脱着剤の研究開発では、対象物の結晶性や粒子径を分析・評価することや、プロトタイプの触媒試料の変換効率をすばやく簡単に測定し性能評価することが重要です。プラントや設備の稼働時では、使用中の触媒や吸脱着剤を分析・評価し品質管理することが、稼働効率の向上につながります。
また、触媒・吸脱着剤が使われる実環境に近い模擬環境での性能や耐久試験は、研究開発から品質管理までの幅広い分野でお客様の課題解決に貢献します。HORIBAは、触媒や吸脱着剤の研究開発から製造まで、さまざまな分析・計測・試験評価のソリューションで支援します。
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触媒・吸脱着剤が使われるさまざまな実環境に近い模擬環境を作り出す試験装置と最適な分析・計測装置を組み合わせたシステムでの総合的な性能や耐久試験は、お客様の開発効率や製品品質の向上に貢献します。
回収されたCO2は圧縮されて地中や油層/ガス層に貯留されたり、コンクリートの中に固定化されます。これにより回収されたCO2の大気中への排出を防止します。
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は、分離・回収された100%に近い高濃度のCO2を地下1,000 m以上深くにある「貯留層」に安定的に貯留します。
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CO2貯留ガス濃度の測定に:プロセス用赤外線ガス分析計 51シリーズ
コンクリート主原料のセメントは製造過程で大量のCO2を排出するため、カーボンニュートラルの実現に向けてセメント使用量の低減とコンクリートによるCO2の吸収・固定化を組み合わせた取り組みが始まっています。
セメント使用量の低減のためには、コンクリート製造時にセメント代替原料として産業副産物(石炭灰)と特殊混和材を使用します。コンクリートによるCO2の吸収・固定化は、コンクリート養生時に強制的に供給されたCO2を特殊混和材が吸収・固定化します。この2つを組み合わせによるコンクリート全体でのCO2排出量の削減が注目されています。
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コンクリートでのCO2吸脱着の評価
炭素・硫黄分析装置 EMIA-Stepは、昇温しながらの炭素量測定も可能なため、コンクリートなどに吸着させたCO2の温度による脱着量の変化を測定できます。
マルチガス分析計 VA-5000シリーズは、 コンクリート試料への供給CO2濃度と 吸着後CO2濃度を1台で測定することで、 CO2吸収型コンクリートのCO2吸収率を測定できます。
HORIBAグループで分析・サービス事業を担う株式会社堀場テクノサービスでは、分析を主要な業務とする「Analytical Solution Plaza」を設置しています。Analytical Solution Plazaでは分析機器選定のご相談のほか、分析装置メーカーならではのノウハウとスキルを活かし、受託分析などのサービスや、お客様やアカデミアとの共同研究等を通じて分析技術を提供しています。