(株)堀場製作所 法務部所属 林 勇気選手が、2016年8月に開催されたリオデジャネイロ五輪(以下リオ五輪)に、アーチェリー競技 日本女子団体・個人代表として出場し、団体8位入賞を果たしました。
(2016年7月時点)
2008年北京大会に続き、2度目の五輪出場という夢をつかんだ林選手に、これまでの道のりとリオ五輪にかける“おもい”を聞きました。
―入社2年目に出場された2008年の北京五輪では、当時の日本女子団体初となる8位入賞を果たした林選手。2度目の五輪出場を控え、8年前と比べて自身に変化はありますか?
北京五輪出場のときは、会場にたくさんのHORIBA社員が応援に駆け付けてくれて、とても心強かったことを覚えています。五輪はどの世界大会よりも規模が大きく、ピリピリした雰囲気で、本当に特別な舞台でした。社会人生活が始まって間もない2007年11月に出場が決定し、その後は五輪までの約8か月間、国内・海外での合宿や遠征試合の連続で、本当に目まぐるしい日々でした。「五輪代表」というプレッシャーをずっと感じていましたね。出場が決まってからの練習や試合では常に力が入り、心身ともにリラックスができていない状態で五輪本番を迎えました。「五輪代表になったのだから、いつも一番でなくてはいけない」と自分自身を追い込んでいました。あの時と比べると今は「五輪本番で結果を出すこと」を目標に、毎回の合宿や遠征で何に注力するかを考え、常に力が入った状態ではなく、また良い意味で気負い過ぎない状態でいられるようになったと思います。
―ロンドン五輪代表を逃し、アーチェリーを辞めようかと考えた時期もあったとのことですが、決して順調ではなかったこの7年間で、再び五輪出場に向けてチャレンジしようと思ったきっかけは?
ロンドン五輪に出場できなくなり、「もうダメなのかなぁ」という気持ちになっていたのは事実です。転機となったのは、2011年に京都で開催されたフィールドアーチェリーの大会に、選手としてではなく役員として運営に参加したことです。競技会場となる山の中に的を準備したり、当日はいわゆる“ウグイス嬢”としてアナウンスをしたり(笑)。すると、出場していた選手から「なんでそんなところにいるの? 試合に出ようよ! 」と誘われ、あまり乗り気ではなかったのですが、半ば無理やり次の試合に出場の申し込みをさせられてしまいました。そんな経緯で初めて出場したフィールドアーチェリーの試合の結果、なんと全日本選手権に出場できることになりました。「全日本選手権で結果を出せば、世界選手権に出場できる。ロンドン五輪に出られない悔しさをここにぶつけよう! 」と心を決め、そこから本格的にフィールドアーチェリーの練習を始めました。
山の中でフィールドアーチェリーを実際にやってみると、普段のターゲットアーチェリーとは違い、高低差があったり、距離がわからなかったりと、考えることがとても多く、新たな気持ちでアーチェリーに向き合うことができました。フィールドアーチェリーの練習で、お弁当を持って山に登ることも楽しかったですね(笑)。全日本選手権は予選を1位で通過し、世界フィールドアーチェリー選手権大会出場権を獲得。そこからはさらに練習に集中し、毎日のように山に登っていました。これほど必死になって練習したことはこれまでなかったと思います。そして挑んだ2012年の世界フィールドアーチェリー選手権大会で個人7位に入賞しました。世界選手権で個人入賞したのは初めての経験で、「がんばればできるんだ! 」と大きな自信につながりました。試合自体もとても楽しく、海外の選手とも仲良くなり、お互いの健闘を讃え合う中で、アーチェリーの素晴らしさを心から感じることができました。
フィールドアーチェリーに真剣に取り組んだ後、改めてターゲットアーチェリーをすると、「考えることがとても多かったフィールドに比べて、ターゲットはなんてシンプルなんだ ! 」と思え、難しく考えすぎず、気持ちのコントロールが楽にできるようになったと感じました。そこから調子が徐々に良くなり、アーチェリーを楽しめるようになってきて、「もう一度五輪出場をめざしてチャレンジしよう」という気持ちが大きくなりました。国際試合の代表に選ばれ、そこで結果を一つひとつ積み重ねていく中で、リオ五輪出場への“おもい”がどんどん膨らんでいきました。
―国際試合に数多く出場し、結果を積み重ねてきた林選手ですが、世界トップレベルで戦う中で、大切にしていることは?
―国際試合に数多く出場し、結果を積み重ねてきた林選手ですが、世界トップレベルで戦う中で、大切にしていることは?
国際試合に出ると、周りの選手がみんな上手く見えます。そんな時、他の選手と比べるのではなく、自分のやってきたことを信じること。これがすべてです。練習でやったことをきちんと出し切れば、必ず結果はついてきます。上手くいかなかったときは何かが足りなかったということ。その原因を分析し、次に向けて気持ちを切り替えることもできるようになってきました。チームで戦う団体戦では、日本女子チームの田中 伸周(のぶかね)コーチのもと、選手3人で「笑顔で試合を楽しむ! 」という雰囲気を大切にしています。楽しむこと、オン・オフのメリハリをつけることで、世界を舞台に力を発揮できるという点は、HORIBAの社是「おもしろおかしく」にも通じることだと思います。北京五輪のときは、出場自体が目標でしたが、リオ五輪では個人・団体ともにメダルを取ることが目標です!