相対法では、対象の試料の特性に近い既知の発光特性と吸光特性、さらに既知のPLQY値を備えている標準試料を使用します。標準試料の吸光度と蛍光性を測定し、その後、対象の試料の吸光度と蛍光性を測定します。 以下の式を使用します。ここで、\(Q_F\)は未知の蛍光試料の量子収率、\(Q_R\)は標準試料の量子収率、\(I_F\)と\(I_R\)は未知の蛍光試料と標準試料のそれぞれの積分蛍光強度、\(A_F\)と\(A_R\)は未知の蛍光試料と標準試料のそれぞれの吸光度値です。ただし標準試料の種類が限られているので、適用できるサンプルはある程度限定されます。
分子の量子収率を計算するために、蛍光寿命と消光剤の様々な濃度を使用する方法があります。 使用する右側の式において、\(\tau_f\)は量子収率、\(K_f\)、\(K_{nr}\)、\(K_t\)はそれぞれ蛍光、無輻射失活およびエネルギー移動の速度定数、τfは試料の蛍光寿命です。PLQYは、FRETやシュテルン-フォルマー消光のような蛍光と競合する無輻射プロセスの速度定数で求められます。
蛍光量子収率 | 蛍光寿命 |
\(\Phi_ f = {k_f \over k_f+k_{nr}+k_t}\) | \(\tau_ f = {1\over k_f+k_{nr}+k_t}\) |
シュテルン-フォルマー消光定数に関する 量子収率
\(\frac{\mathrm I_0}{\mathrm I} = 1+K[Q]=1+k_q\tau_0[Q]\)
図21:蛍光量子収率は、蛍光の速度定数(kf)、無輻射消散の速度定数(knr)およびエネルギー移動の速度定数(kt)を使用して計算されます。蛍光寿命は、速度定数の総和の逆数として計算されます。そして量子収率は、シュテルン-フォルマー消光定数(K)、二分子消光定数(kq)および寿命(t0)に関連します(Lakowicz, 2006)。
積分球法は、PLQYを測定する直接的な方法です。球体は、硫酸バリウム系材料またはSpectralon®のような全反射面で覆われ、球体の内外へのあらゆる光を取り込みます。 試料の蛍光発光(\(E_c\))と散乱(\(L_c\))およびブランクの発光と散乱(\(L_a\)と\(E_a\))についての測定を行います。これらの2つのスペクトル測定値(試料とブランク)を用いて、図24の式よりPLQYを算出します。
ここで、\(E_b\)は球体からの間接的な発光により引き起こされる試料からの積分発光値で、\(A\)は励起波長での試料の吸光度です。適切なスペクトル補正係数と共に2つのトレースを組み込んだ単純な計算式を使用して、PLQYおよび関連する誤差を解析します。
\(\Phi_f = {E_c-(1-A)・E_b \over L_a・A}= {E_c-E_a \over L_a・L_c}\)
図24:積分球を用いた測定による量子収率計算式
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