一重項酸素は、光増感分子が基底状態の酸素と反応することで生成されます。分子の三重項状態は、その長い減衰時間と不対価電子の存在により化学反応性が高くなっています。基底状態の酸素(3O2)との反応により、一重項酸素(1O2)が生じます。一重項酸素は、約1270 nmに発光スペクトルのピークがあり、これにより光子が三重項状態から放出されます(りん光)。
一重項酸素の発光メカニズムの中に三重項からの発光があり、この発光寿命は比較的長く、この間に異なる種と反応したり接触することで失活(消光)します。一重項酸素の検出に使用する計器には、一般的に、InGaAs検出器(PMT、アナログ、またはアレイ)のような近赤外検出器と、近赤外波長領域における効率を考えたグレーティングが必要です。 一重項酸素の生成は、酸素の存在下での光増感分子の光照射と、これに続く基底状態の酸素と励起三重項状態の光増感剤の反応、そしてこれによる励起一重項状態の酸素の生成を伴います。これには、ローズベンガル、遷移金属錯体(下記)、ポルフィリン、フルオレセイン、およびその他(DeRosa, 2002)の分子が含まれます。このような分子をピーク吸収波長で励起することで、励起状態にあるこれらの分子が基底状態の酸素と反応し、一重項酸素を生成します。
一重項酸素を生成するメカニズムは、光線力学療法、抗がん剤、およびその他の皮膚の治療に重要です。 一重項酸素の反応自体は、生体システム内などの有機分子を損傷することがありますが、その反応性を制御すれば、がん治療や光感作剤に使用する方法になる可能性があります。 光線力学的療法では、光ファイバー光を悪性がんの患者の体内に挿入するか、または体外に配します。そして可視光を照射し光増感分子(光感作薬物)と反応して、微小環境の酸素にエネルギーを与え、さらに非毒性の一重項酸素種を生成して腫瘍を縮小または死滅させます。 一重項酸素種は、酸素を含む化学反応性の高い化学的変種です。 光線療法としても知られる光線力学的療法は、体組織の表面近くにある悪性腫瘍の治療法で、光が化学物質に作用します。 これは、ラジカルや毒性のある光源を用いる放射線治療とは異なります。また、化学療法のように規則性のある副作用を引き起こすこともありません。光線と分子の光線力学的療法は、非毒性で無害です。
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