サービス > 受託分析・試験サービス > バイオ・ライフサイエンス > X線分析顕微鏡(XGT)を用いた生きた植物の元素分布測定
植物の元素分布を測定する場合、その植物が生存していた時のままの分布像が求められます。X線分析顕微鏡 (XGT)のマッピング測定では、生きている植物の葉を測定して元素分布像を得ることができます。
X線分析顕微鏡(XGT-5200, 堀場製作所)を用いて、ツル植物のウマノスズクサの茎を水につけて生きたままの葉の元素分布を測定し、押し葉にして保存されていたウマノスズクサの葉の元素分布と比較しました。 生きた植物の葉の元素分析結果から、植物サンプルのポピュラーな保存方法の押し葉(乾燥サンプル)では得られない S(イオウ)の葉内分布(葉脈部分に少ない)を確認した事例を紹介します。
X線分析顕微鏡(XGT)は蛍光X線像と透過X線像が 同時に測定できます。
図1に装置の測定部の概略図を示します。 X線導管(XGT:X-ray Guide Tube)によって 10μmφ または、100μmφ に絞ったX線をサンプルに照射し、 サンプルから放出される蛍光X線を 45 度後方上部の エネルギー分散検出器で、サンプルを透過したX線(透過X線)を下方のX線検出器でそれぞれ同時に測 定します。
図2に生きたままのツル植物(ウマノスズクサ)を試料台に固定した様子を示 します。水の入った25mlメスフラスコに茎を入れ水分供給して測定しました。 測定した結果を図3に示します。Zn分布は生体・乾燥いずれのサンプルも葉脈 に集積していますが、生体サンプルのSは葉脈以外の部位に分布しています。 乾燥サンプルでは、葉脈の随所にポイント状のS集積が確認されます。
XGTで植物を測定する時、有機薄膜でサンプル固定し、乾燥による縮れに注意すれば、生きたままでのマッピング測定が可能です。押し葉のような乾燥サンプルでは、乾燥する時に元素分布が変化してしまうこともあります。
ここで紹介した事例の詳細については、
<x線分析顕微鏡(XGT)による植物の元素分布測定>X線分析の進歩49 Adv.X-Ray.Chem.Anal.,Japan49,pp.249-256(2018) をご参照ください。