サービス > 受託分析・試験サービス > 半導体 > 多結晶シリコンの結晶性評価
分光エリプソメーターは主に膜厚や光学定数(n&k)の評価に用いられますが、非常に高精度・高性能であることより、他に光学異方性や組成などの材料特性の情報を得ることが可能です。ここでは、フィッ ティングにより得られた光学定数スペクトルから計算できる結晶性の評価について、シリコン(Si)の例 を用いて紹介します。
分光エリプソメトリーは、入射光と反射光の偏光状態の変化を波長ごとに計測し、得られた測定データをもとに光学モデルを作成、フィッティング計算をすることにより薄膜の膜厚および光学定数(屈折率n、消衰係数k)を非破壊、非接触で求める分析手法です。この手法を行う装置を分光エリプソメーターといいます。
サンプルはガラス基板上に多結晶シリコン(p-Si)を成膜し、その後レーザーアニールによりp-Siの結晶性をより向上させたもので、レーザー強度により 結晶性がどのように変化するかを調べました。光学モデルは図 2 の通りであり、p-Si は単結晶 Si(c-Si)とアモルファス Si(a-Si)を有効媒質近似で混ぜた ものとして表し、c-Si の体積比率を Si の結晶性としました。またクロスチェックとして同一サンプルをラマン分光法で測定しました。
図3にp-Siの屈折率(n)、図4に消衰係数(k)を示します。その結果、レーザー強度が強くなると、バンド遷移特有の 3.4eV、4.3eV付近のピークが強くなっていることが分かりました。結晶が大きくなり単結晶に近くなるほど、これらのピークはシャープに半値幅は狭くなり、このピークの高さや半値幅 から、作製した p-Si の結晶性を評価することができます。図 5にレーザー強度と分光エリプソメーターで求めた p-Si の結晶性の関係を示します。その結果、レーザー強度が大きくなると p-Si の結晶性が 強くなることが分かりました。ラマン分光法でも同様の結果が得られたことより(図 6)、分光エリプソ メーターで求めた p-Si の結晶性は妥当であると考えられます。
分光エリプソメーターを用いることで、光学定数(n&k)から結晶性を評価することが可能です。