サービス > 受託分析・試験サービス > 半導体 > 有機ELサンプルの評価
有機発光ダイオード(有機EL, OLED)はディスプレイや照明などへの応用に使われています。有機ELに使われる材料は大気中に晒されると状態が変化(劣化)し、性能を悪くします。そのため一般的には材料を封止して劣化を防ぎます。分光エリプソメーターでは封止された状態の有機ELサンプルを評価することが可能です。ここでは、封止缶サンプルと、ガラス基板上に成膜したNPDを大気中に約1か月間晒したサンプルの状態変化を分光エリプソメーターにより評価した事例について紹介しています。
分光エリプソメトリーは、入射光と反射光の偏光状態の変化を波長ごとに計測し、得られた測定データをもとに光学モデルを作成、フィッティング計算をすることにより薄膜の膜厚および光学定数(屈折率n、消衰係数k)を非破壊、非接触で求める分析手法です。この手法を行う装置を分光エリプソメーターといいます。
封止缶サンプル(B)はガラス基板側から測定をする必要があります(図2)。そこで裏側からの測定が正しく評価できているかの確認のため、封止していないサンプル(A)も測定を行いました。サンプルAは表面からと裏面から、サンプルBは裏面から測定をし、これらの3つの結果を比較しました。 膜厚は裏面から測定を行った結果の方が若干厚いですが、1.6nmほどの違いに納められており、屈 折率(n)は 3桁目の違いとなりました (表1)。次にn&kスペクトルを見ますと 400nm以下でずれが見られていますが、これは裏面から測定をする場合Glassの吸収とラフネスの影響でα-NPDが見えにくくなるためです。一方、可視域では大きなずれは見られていないので(図5)、封止缶サンプルは可視域において、裏面からの測定により評価が可能と言えます。
まず見た目の変化について確認したところ、7/26の時点では透明だった膜が8/22には白い粒がたくさん見られるようになりました(図3)。次に測定データを見ると、8/22では大きな違いが見られ (図 4)、フィッティング計算により膜厚と光学定数(n&k)を求めた結果、劣化が進むにつれ膜厚が増えていき、波長 633nm の屈折率が下がる傾向が見られました(表 1)。さらにn&kスペクトルを確認したところ(図 5)、UV 域では大きな違いは見られませんが、可視域においてnの違いが大きくな っているのが分かりました。これは時間が経過するとNPDが大気中の水分を含んでしまい、その影響により膜厚やn&kスペクトルに変化が現れたものと推測されます。
分光エリプソメーターを用いることで、有機ELの劣化の評価を非破壊・非接触で行うことができます。