データ取り込みソフトウェア
GATELINK
動物病院様向けに検査結果をPC端末に取込み可能です。プリントアウトも可能。 ※オプション機能です。
東京都
使用機器:動物用自動血球計数装置 LC-662
データ取り込みソフトウェアGATELINK
測定項目:CBC
犬猫に比べるともう少し根本的な部分から考えていきます。例えば、どうやったら触れるか?取り上げられるか?などです。敏感な動物は、担当飼育員以外のスタッフが近くに寄るだけでも警戒してしまいます。動物が人間に慣れるようにするのも大事な役割です。
ここでの獣医師は1名だけなので、薬の専門知識の共有などスタッフの教育含め、フォローアップしながら解決策を一緒に探っていきます。もちろん獣医でないとできないことも多々あるので、常に迅速に対応できるようスタンバイしています。
正常値がわからない動物が多いので、犬猫のようにあたりをつけて治療するのは難しいです。そのため、同じ個体・種からの経験則で正常か異常かを比較するなど、色々試行錯誤しながら、診療を行っています。時には文献を参考に治療したり、同じ種の動物を飼育している動物園・水族館の獣医に相談したりと、日々奮闘しています。また、全国の動物園・水族館獣医師の研究会で、珍しい症例発表を聴講して情報を収集するなど、他園や他館の獣医師と相互に情報交換・共有を行っています。
主に血液検査している動物は、イルカ・アザラシ・ペンギンです。CBC検査は、イルカ・アザラシに実施し、血液化学検査は、イルカ・アザラシ・ペンギンに実施しています。ペンギン・両生類・爬虫類のCBC検査は、装置での測定は難しく、塗抹で観察したり、血算板で測定したりしています。またペンギンのヘマトクリット(Hct)値はヘマトクリット管で確認しています。Hct値がある程度わかれば、貧血かどうか指標にすることができます。
Hct値、白血球数は注意してみています。そこから再検査や、肉眼での詳細な確認を追加します。
血球の凝集や溶血などの血液の状態によっては、通常の数値とかけ離れた数値が出てしまう場合もあるので、血算板での測定もバックアップのために実施しています。
アザラシは後肢の付け根部分の静脈から採血します。イルカは主にひれ(主に尾びれ)から採血します。中心に太い動脈が走っていて、上下を静脈が包み込んでいる形なので、背側からも腹側からもアプローチが可能です。いずれも、通常使用している針の太さは22Gですが、警戒する個体の場合は、25、27Gから始めます。毎回、20-30mL採血します。
「血液検査以外にも一般の血液化学検査やプロゲステロン、エストラジオールなどの性ホルモンの変動や、T3、T4、TSHなど甲状腺の数値を見るため委託検査センターにも提出します。また、何かあった場合に、追加検査ができるように保管もしています。
特に海獣の血液は血清が凝集しやすく、ゼリー状になってしまいます。量としてあまり血清が取れないので、なるべく多くとっておきたいというのも理由です。
しかし、1頭を新しく血液検査できる状態にするには、長い準備期間が必要です。採血するには、まず、普段見ている飼育員以外の人間に慣らし、脚を触ることに慣らし、針刺激に慣らさなければなりません。特にイルカはアザラシに比べて痛みに敏感です。一つ一つの段階を徐々に慣らす必要があるため、いまだ全頭への採血はできていません。このトレーニングを継続し、全頭への採血が実現すれば、サンプルが増え、しながわ水族館の傾向が見えてくるのではないかと考えています。
イルカの血液は、犬・猫に比較的近いと思いますが、血球の成熟が速いせいなのかはっきりした分岐のタイミングがわかりづらいと思います。そのほか、好中球・リンパ球がメインで、好塩基球はそこまで多くなく、逆に好酸球が多い気がします(個体によっては5-10%)。
一方、アザラシは、Hct値が結構高い(平均60-70%台)と思います。白血球数は犬・猫に比べると高く(平均7000-8000/μLから)、血液化学では、コレステロール・中性脂肪・肝数値などが高めだと思います。
トレーニングが完了しているイルカ、アザラシには、1ヵ月に1回程度実施しています。
一般の伴侶動物と同じだと思いますが、まずは便状や可視粘膜の状態で、健康状態を把握するようにしています。特に、イルカは水温・気温の変動に敏感で体温が変動しやすいので、体温はこまめに計っています。CBC検査ができる場合は、見えていない部分で出血している可能性がないか、貧血の確認のために赤血球系の数値を確認します。また、外に近い環境で飼育しているため、感染症の可能性がないか、ウイルス感染・細菌感染の兆候を見る為に白血球の数値を確認します。
治療を継続している個体には、薬の反応を見るために肝、腎数値の変動をみます。感染症を疑っている個体に対しては、CBC検査を定期的に実施します。ただし、回数を頻繁に行うと警戒されてしまうので、定期的に見たい個体であっても、1週間~10日に1回の間隔で検査を行います。調子が悪い状態が何日か続く場合や、見た目にも状態が悪化してきた場合に血液検査を行います。大きな個体になるほど保定するのが難しく、時間がかかるので、処置・検査にかかる時間をなるべく短くするように心がけています。
主にリンパ球・好中球の増減を見ています。この項目の数値により、炎症、特にウイルス感染や細菌感染を疑う指標としています。感染を最初から疑ってCBC検査を行い、治療します。そのためかCBC検査の結果をみて判断することが多くなったと思います。
基本的に支持療法・対症療法がメインになります。内服薬を使う場面はありますが、量が多くなり、必要量が内服できないなど、なかなか頻繁に使用できません。薬を使用する場合にも、犬・猫と違い、海獣用には研究されていない薬も多いので、以前に報告がある薬をまず使ってみるということが多いです。報告されていない薬でも、可能性があれば試してみることもあります。
今までは、塗抹標本での目視確認を行っていましたが、どこをポイントとしてみているかで個人差があったり、塗抹の引き方にも個人差が生じていたりと、なかなか正確な結果が出しづらい状況でした。継続的に測定を行っていきたかったこともあり、CBC測定装置の導入を決めました。当館では、この装置が初めてです。 装置を導入したことで、測定までの工程が迅速になり、正確性の高いデータで話ができるため、業務の引継ぎ時のすり合わせが大変やりやすくなりました。また、作業の合間に測定できるので便利です。
以前は、血算板、塗抹で確認したデータをエクセルに一項目ずつ打ち込んでいました。そのため、打ち込みミスや個体の取り違いなどのヒューマンエラーが起こりやすかったと思います。また、決まったフォーマットが無いため、追加や削除、修正が手間でした。GATELINKを紹介いただいた際、「フォーマットが統一されていることで各回の検査数値が見やすくなるのでは?」「標準値を入力しておくことで、獣医師以外がデータを確認しても異常を見つけやすいのでは?」と思い導入を決めました。現在は、各検査結果を個体ごとに保存、部内や外部へ結果を共有する際に印刷しています。CBCと血液化学の結果を簡単にタグ付けでき、個体ごとに見直せるので、検査データのバックアップとしても活用しています。測定項目の変更に合わせてフォーマットを更新できるのもいいですね。
動物たちの高齢化、新規動物の導入が難しくなっていく中で、飼育している海獣たちの健康維持を管理していくのはもちろんのこと、繁殖関連についても進めていき、個体数の維持に努めるのも獣医の役割だと思っています。そのためには、今後も幅広く知識を得るために勉強していきます。また、今水族館にいる飼育生物の繁殖のために、今後は人工授精にも取り組んでいきたいと思っています。
獣医師の中でもニッチな分野になり、どうしても人数を多く確保できないのが現状です。自分たちの中での知識・経験の共有で終わらせるのではなく、外部との共有・発信を行うことで、正しい知識や水族館で何をしているのか・何が起こっているのかをわかりやすく伝えていく取り組み・姿勢が重要なのではないかと感じています。
施設名 | しながわ水族館 |
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住所 | 東京都品川区勝島3-2-1 |
電話 | 03-3762-3433 |
ウェブサイト | https://www.aquarium.gr.jp/ |
ワンタッチでイヌ・ネコ切り替え。
吸引量10 μL。診断に必要な検査結果を、約70秒で表示します。
製造販売届出番号 :
22動薬第1806号
※本製品は、MICROSEMI Corporationといかなる関係もありません。
動物病院様向けに検査結果をPC端末に取込み可能です。
プリントアウトも可能。
※オプション機能です。
来館者は水族館に癒しを求めに来るためか、長屋先生もそうでしたが、スタッフの皆様に笑顔で迎えていただいたのが印象的で、インタビューする私の緊張も解けました。また、一般の来館者では入ることのできないバックヤードで、治療用水槽の中の魚や餌の準備作業・イルカの調教の様子、さらには閉館後の水族館などを見ることができ、特別な時間を過ごさせて頂きました。
(2021年3月取材)
※掲載している情報は取材時点のもので、現在とは異なる場合がございます。