当社より発売中のコンパクトメータLAQUAtwinシリーズを用いて、市販の有塩トマトジュースおよび無塩トマトジュースのpH、導電率、ナトリウムイオン、カリウムイオンならびに塩分(液膜ナトリウムイオン電極方式)を測定しました。同時に導電率の測定値からの塩分換算値を算出しました。サンプルのトマトジュースは一切の前処理をせずにそのまま測定しました。測定時の室温は25℃でした。次の表はそれらの結果を示したものです。
【表】LAQUAtwinによるトマトジュースの塩分等の測定値【表A】
有塩トマトジュース | pH | 導電率(mS/cm-1) | Na+(ppm) | K+(ppm) | 塩分(%、導電率換算) | 塩分(%、ナトリウム換算) |
---|---|---|---|---|---|---|
表示値 | - | - | 1421 | 2526 | 0.42 | 0.42 |
測定値 | 4.27 | 12.6 | 1100 | 2300 | 0.71 | 0.29 |
無塩トマトジュース | pH | 導電率(mS/cm-1) | Na+(ppm) | K+(ppm) | 塩分(%、導電率換算) | 塩分(%、ナトリウム換算) |
---|---|---|---|---|---|---|
表示値 | - | - | 60 | 2500 | 0 | 0 |
測定値 | 4.27 | 7.5 | 61 | 2200 | 0.42 | 0.02 |
上記の表から明らかなように、有塩トマトジュースおよび無塩トマトジュースとも、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンの測定値はそれぞれの表示値とほぼ一致しています。また、塩分測定値はそれぞれ0.42%の表示値に対して0.29%、0%の表示値に対して0.02%となりました。一方、導電率からの換算塩分値はそれぞれ0.71%および0.42%となり、過大になる傾向が見られました。特に、無塩トマトジュースについての値の過大さは導電率からの換算方式の塩分計の欠点、すなわち共存するすべてのイオンの影響を受けるという欠点を示していることが理解されます。
ここで導電率と塩分濃度について述べます。いわゆる廉価版の塩分計では、サンプルの導電率の測定値を塩分に換算して表示する方式が用いられています。
次の表は、塩水(食塩水)の濃度と導電率の関係を示したものです。
【表】塩水の濃度と導電率(液温25℃)
NaCl濃度 | 導電率 | NaCl濃度 | 導電率 |
---|---|---|---|
0.1 | 2.0 | 1.1 | 19.2 |
0.2 | 3.9 | 1.2 | 20.8 |
0.3 | 5.7 | 1.3 | 22.4 |
0.4 | 7.5 | 1.4 | 24.0 |
0.5 | 9.2 | 1.5 | 25.6 |
0.6 | 10.9 | 1.6 | 27.1 |
0.7 | 12.6 | 1.7 | 28.6 |
0.8 | 14.3 | 1.8 | 30.1 |
0.9 | 16.0 | 1.9 | 31.6 |
1.0 | 17.6 | 2.0 | 33.0 |
出典;IEEE.J.Ocean.Eng.,OE-5(1),3-8(1980).
導電率方式の塩分計は、これらの値を用いて塩分に換算します。なお、汽水(海水と淡水が混ざった水)域での使用を目的とした「標準海水およびそれを希釈した水の導電率」に基づくものもあります。
導電率は、サンプル中に存在するすべてのイオンに起因するサンプル中での電流の流れやすさを測定するため、食塩に対する選択性に欠け、食塩以外のイオン化合物(イオン)が共存するサンプルでは精度面で多くを期待できません。このことは無塩トマトジュースでの結果(塩分ほぼ0%のものが、導電率換算塩分として0.42%となったこと)からも明らかです。本方式の塩分計の使用に際しては、このことを充分に知っておく必要があります。特に、導電率の値に大きな影響を与える各種の有機酸(酢酸、クエン酸など)を多く含むサンプルの塩分測定には、導電率方式の塩分計は適していないと言えます。具体的には、前述のトマトジュースを始め、かんきつ類のジュース、お酢を多く含む食品類などの塩分測定には導電率方式の塩分計は適しておらず、ナトリウムイオン電極方式の塩分計の使用が推奨されます。
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