塩分の話は、多くの方々の関心が深い分野でしょう。特に、高血圧、循環器系疾患と塩分摂取量の関係が強く叫ばれています。この章では、塩分および塩分の測定方式についてできるだけやさしく解説しています。
なお、塩分計による実際の測定例については、「コンパクトイオンメータでの測定例」を参照してください。
高血圧、脳卒中などは、塩分の取り過ぎと関係があるとして塩分を過剰に取らないように呼びかけられています。一方で、近年夏場の高温期には熱中症対策として水分と共に塩分の摂取が必要となる場合もあるとも言われています。
2005年以来5年ぶりに改定された「日本人の食事摂取基準(2010年版)」(厚生労働省)では、成人に勧められている1日の塩分摂取量として食塩換算で男性9g未満、女性7.5g未満とされ、高血圧症の人の場合は、「高血圧治療ガイドライン(2009年版)」(日本高血圧学会)で成人1日6g未満とされています。
同様に、2003年の世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)の共同ガイドラインでは、成人1日の塩分摂取量5g未満(ナトリウムとして2g未満)が、また2006年アメリカ心臓協会(American Heart Association)ではナトリウムとして1日2,300mg(2.3g)未満とすることがそれぞれ勧告されています。このように、近年1日当たりの塩分摂取量を一層低減するように提言されています。
では、塩分はどのように測るのでしょうか。
塩分の測定方式として、代表的なものに次のような方式があり、それぞれメリットとデメリットがあります。
これらの方式の中で、測定器の小型化・簡易化にはイオン電極方式、屈折率方式および導電率方式が適しています。ただし導電率方式は、共存するすべてのイオンの影響を受けるという欠点があります。また屈折率方式は、サンプル中に溶存する食塩に対する選択性がなく、砂糖類や各種の有機酸などサンプルの屈折率に影響するすべての成分の影響を受けるため、その使用は漬け物液の塩分測定など一部の用途に限定されます。
ナトリウムイオン電極方式はカリウムイオン(K+)およびリチウムイオン(Li+)の影響を受けますが、それ以外のイオンに対しては選択性に優れています。また食塩の生理作用がナトリウムイオンに起因することから、ナトリウムイオンを検知することに意義があると言えます。たとえば、食品中のグルタミン酸ナトリウム(いわゆる旨み調味料)に起因するナトリウムイオンも検知して食塩に換算して表示します。食塩とグルタミン酸ナトリウムの分子量(正しくは式量、それぞれ58.4および169.1)の比から、グルタミン酸ナトリウム1gは食塩約0.35gに換算されます。
堀場製作所では、ナトリウムイオン電極方式の塩分計と導電率方式の塩分計を販売しています。また最近発売したLAQUAtwinシリーズの塩分計では、ナトリウムイオン電極方式を採用しています。
スポーツをして汗をかいたときには、塩分の補給が必要と考える方は多いのではないでしょうか?しかし、体が汗や尿から出る塩分をコントロールするため、よほどの重労働や激しいスポーツをしない限り、水分の補給で充分と言われています(塩分を過剰に摂取すると腎臓の負担が大きくなるため逆効果になる場合もあると言われている)。
一方で、近年の夏場の高温期には、熱中症対策として水分と共に塩分の補給も必要な場合があるそうです。このようなときには、水分やミネラル分を効率良く補給する、いわゆるスポーツドリンクが適しています。
次ページ よくある質問(Q&A)-塩分